「SAPというERPパッケージが気になっているけど、いくらで導入できるの?」
「導入費用の内訳を詳しく知りたい」
企業の事業情報や経営資源を共有して管理するERP(基幹システム)。
その中でも、企業に必要なモジュールだけを組み合わせて利用できる「SAP」に興味をお持ちではないでしょうか。
しかし、導入するうえで気になるのが費用の問題です。
いったいいくらでSAPを導入できるのか、また詳しい内訳が気になっている人も少なくないでしょう。
そこで今回は、SAPの導入費用や詳しい内訳についてわかりやすく解説します!
記事の後半では、SAP導入時の比較ポイントや、導入の流れについてまとめているので、ぜひ最後まで読んでいただき、お役立てください。
- SAPの導入費用は「パッケージタイプ」「クラウドタイプ」で変化する
- SAPを導入する手順を把握して、事業を効率化しよう
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SAP(ERP製品)の導入費用の相場
ERP製品のひとつであるSAPは「パッケージタイプ」「クラウドタイプ」によって導入費用が変化します。
またSAPは、自社で必要となる複数のモジュールを組み合わせて利用することから、組み合わせ方や会社規模によっても費用が変化するのが費用の特徴です。
SAP導入の相場感の参考として、パッケージタイプ・クラウドタイプの費用を以下にまとめました。
パッケージタイプ | 中小企業で3,000万円程度 |
---|---|
クラウドタイプ | 中小企業で月額80万円程度 |
費用の考え方について、次項から詳しく解説します。
パッケージタイプの場合
SAPのパッケージタイプは、あらかじめ複数のモジュールがまとまっているセットであり、中小企業規模の場合、およそ3,000万円の導入費用がかかると言われています。
例えば、以下に示す3つのパッケージが用意されており、効率化に必要な項目だけを導入できるのが特徴です。
- データ管理
- 財務会計プロセス
- システム管理
また、SAPのパッケージ管理画面では、パッケージの追加・削除といった手続きに対応しています。
導入後に必要なパッケージを変更できることも含めて、費用が増減しやすいと覚えておきましょう。
また、SAPのパッケージタイプは後述するクラウドタイプよりも、初期導入コストが高額です。
大企業規模になると5,000万円~数億円のコストが発生する場合もあると言われています。
クラウドタイプの場合
SAPのクラウドタイプは、SaaSとして提供されている次のSAP製品を導入する方法であり、中小企業の場合、月額80万円程度の費用がかかると言われています。
- SAP S/4HANA Cloud
- SAP Business ByDesign
Webを通じてSAPの機能をすべて利用できることから、自社でシステム導入環境を整備せずに済み、初期導入コストを抑えられます。
ただし、ランニングコストが高額になりやすいのがクラウドタイプの特徴です。
SAPのサービスを複数利用し、使用期間が長ければ長いほどコストが増えやすいと覚えておきましょう。
SAPとは
SAPとは、ドイツで業務管理・効率化に関わるソリューションを提供するSAP社が提供しているERPです。
ビジネス機能を網羅している100種類以上のソリューションを利用できるほか、企業経営の土台となる「ヒト・モノ・カネ」に関わる情報をまとめて一元管理できます。
例えば、従来のビジネスモデルでは企業経営に関わるデータが一元管理されておらず、担当者ごとにバラバラに取り扱われ、すばやく必要な情報を見つけ出せないのが課題です。
一方でSAPは、業務に関わる数多くの情報を一元管理し、関係者間で情報を共有できます。
すでに世界で2億3,000万人がSAPを導入しており、国内でも大企業~中小企業まで幅広い企業がソリューションを導入している状況です。
SAPとERPの違い
SAPとERPは別ものだとイメージされがちですが、実はERPとSAPは同じ種類です。
厳密に言うと、SAPはドイツのSAP社が提供しているERPという位置づけであり、基本的な機能は一般的なERPと変わりません。
ただしSAPと一般的なERPには次の違いがあります。
SAP | 一般的なERP | |
---|---|---|
業務への適用 | SAP自体を業務プロセスのベースにできる | 既存業務にツールや機能を当てはめていく |
費用対効果 | 必要なモジュールだけを導入できるため、費用対効果を生み出しやすい | 不要なモジュールがセットになっている場合が多いため、費用対効果を生み出しにくい場合がある |
複数の機能がまとまった従来のERPとは違い、SAPは業務ごとにモジュールが分かれています。
「○○の業務を効率化したい」など、課題を抱えている特定の業務だけにSAPを適用できるのが魅力です。
SAPで利用できるソフトウェアの種類
SAPで提供されているソフトウェアの種類をまとめました。
主なSAPソフトウェア | ソフトウェアの概要 | |
---|---|---|
ビジネステクノロジープラットフォーム | SAP Analytics Cloud SAP Build Apps SAP Datasphere |
データ可視化・分析AIなどを活用して、予算・計画といった経営管理に利用できる |
ビジネスネットワーク | SAP Business Network Asset Collaboration | 導入している設備資産(システム)に保管されているデータやワークフロープロセスを共有する |
CRM およびカスタマーエクスペリエンス | SAP Service Cloud | カスタマーサービス管理など顧客からの問い合わせなどへの対応を効率化する |
エンタープライズリソースプランニング | SAP S/4HANA Cloud Public Edition | 基幹システムの管理およびアナリティクス機能により業務を効率化する |
人事/人材管理 | SAP SuccessFactors Employee Central SAP SuccessFactors Talent Management |
従業員満足度の管理・人材管理・採用管理といった機能を活用できる |
サプライチェーン管理 | SAP Integrated Business Planning | 自社工場および取引先となるサプライチェーンと受発注・データ共有を実施する |
出張・経費管理 | SAP Concur Expense SAP Concur Invoice |
インボイス対応で従業員が使用した経費や出張費を管理する |
またSAPでは、モジュールという名前で数多くのソフトウェアが提供されています。
- 会計モジュール:財務会計・購買計画など
- ロジスティックモジュール:販売管理・在庫管理・棚卸など
- 人事モジュール:人材採用・勤怠管理など
- 生産管理モジュール:生産契約・発注管理など
- 倉庫管理モジュール:倉庫の在庫管理・サプライチェーンとのデータ共有など
ほかにも数多くのモジュールを組み合わせながら、経営を効率化できるのがSAPの魅力です。
SAP導入費用の内訳・価格表
SAP導入にかかる費用の内訳を「パッケージタイプ」「クラウドタイプ」別に価格表を整理しました。
項目 | パッケージタイプ | クラウドタイプ |
---|---|---|
ハードウェア購入費用 初期導入費用 |
300~350万円 | 10万円程度 |
ライセンス取得費用 | 700万円程度 | 5~7万円程度 |
サブスクリプション費用 | なし | 80万円程度 |
導入サポート費用 | 1,500~1700万円 | なし |
カスタマイズ費用 | 500万円程度 | なし |
トレーニング費用 | 100万円程度 | 条件によってはあり |
導入にかかる費用の合計 | 3000万円程度 | 100万円程度(月額80万円程度) |
次項から詳しい費用の内訳を紹介します。
ハードウェア購入費用(初期導入費用)
パッケージタイプのSAPを導入する際には、あらかじめ専用のハードウェアを準備する必要があります。
ハードウェアの費用・設置費用を含めて300~350万円近くかかるイメージです。
ちなみに中小企業の場合には、次のハードウェアを準備します。
- 開発機(カスタマイズ・プログラム開発の環境):1台
- 検証機(テストを実施する環境):1台
- 本番機(リリースして運用する環境):1台
ハードウェアを設置するスペースも必要になるため、導入コンサルタントと話し合いながら、設置スペースを検討しましょう。
また、クラウドタイプのSAPは製品によって金額が異なります。
初月無料で導入できるほか、費用がかかっても10万円程度に収まるのが一般的です。
ライセンス取得費用
ライセンス取得費用は、SAPサービスの利用権を取得するために必要な費用です。
パッケージタイプ・クラウドタイプの両方で必要となる費用であり、以下の費用が発生します。
パッケージタイプ | クラウドタイプ | |
ライセンス取得費用 | 700万円程度(中小企業の場合) | 5~7万円程度(1人当たり) |
パッケージタイプのほうがボリュームが大きいため、費用が高額です。
契約者数が多くなればなるほど、1人当たりの単価を下げてもらえるケースもあります。
サブスクリプション費用
サブスクリプション費用は、クラウドタイプの契約でのみ発生する費用です。
SaaSとして提供されているSAPのモジュールを利用し続けるために、月額80万円程度の費用を支払わなければなりません。
ちなみにサブスクリプション費用は、契約しているユーザーの人数で変わることがほとんどです。
SAPの場合、運用サポートの費用もサブスクリプション費用に含まれています。
導入サポート費用
パッケージタイプのSAPには、導入手順がわからない方向けに導入サポートが提供されています。
費用はおよそ1,500~1,700万円程度であり、継続的にサポートを提供し続けることから高額になりやすいです。
もし導入やその後の運用に関するサポートが不要なら、大幅に導入費用を節約できます。
ただし、契約後に機能や操作に関する問い合わせなどに対応してもらえなくなるため、ほとんどの企業が導入サポートを契約しています。
カスタマイズ費用
パッケージタイプを利用するとき、機能やモジュールを追加・拡張したいという場合にはカスタマイズ費用が発生します。
カスタマイズ費用はおおよそ500万円程度に収まりますが、以下に示す条件になるほど費用が高くなりやすいことに注意しなければなりません。
- カスタマイズしたい項目が多い
- 自社のビジネスモデルを優先してカスタマイズする
- 複雑なカスタマイズを希望する
少しでもカスタマイズ費用を抑えたいなら、あらかじめ自社に必要な機能とSAPのパッケージタイプを比較し、必要なモジュールを抽出しておくことが大切です。
トレーニング費用
トレーニング費用は、導入したSAPの使い方をプロから学ぶためにかかる費用です。
一般的な費用は100万円程度であり、トレーニングの期間が長くなるほど高額になっていきます。
またクラウドタイプの場合にもトレーニングを受けられますが、SaaSとしてサービスを利用するため、運用で対応できることがほとんどです。
SAP導入時に比較すべきポイント
SAPの導入を検討する際には、費用面だけでなく次の項目も合わせて比較してください。
パッケージとクラウドの違いを理解する
SAPの導入で検討しなければならないのが「パッケージタイプ」「クラウドタイプ」のどちらを導入すべきか判断することです。
例えばパッケージタイプの場合、SAP導入後にカスタマイズしやすいほか自社に設置したハードウェアで管理するため、セキュリティ強化を図りやすいというメリットをもっています。
逆にクラウドタイプは、既存のパソコンからモジュールにアクセスできることから、ハードウェアを設置する必要がありません。
また準備期間も必要なくすぐに運用を開始できるといったメリットをもっています。
それぞれ導入・運用の特徴が異なるため、確保している予算や設置スペース、運用方法をもとにプランを選択すると良いでしょう。
他社ERPとの違いを比較する
SAPの導入を検討する際には、類似の機能を利用できる他社ERPと比較することも大切です。
参考として、比較ポイントを以下にまとめました。
- 見積もり価格やランニングコストの違い
- 自社の課題をより解決しやすい機能があるか
- サポート範囲の違い
なかでもチェックしておきたいのが提供されている製品・サービスと見積もり価格を比較することです。
同じ機能をもつ製品だとしても、提供されているサービスごとに価格の違いがあります。
費用を抑えつつ無理なく運用し続けられるERPを導入するために、SAPおよび他社製品を比較し、自社に最適な基幹システムを見つけてください。
SAPが日本企業に合わないと言われている理由
基幹システム「ERP」のひとつである「SAP」について、日本企業に合わないと言われることがあります。
なぜ合わない・向いていないと言われるのか、具体的な理由をまとめました。
- SAPがもともとドイツ向けのERPであるため
- 費用対効果を生み出せなかった
- 操作できない従業員が多く業務を効率化できなかった
- 自社で利用しているデータと連携できなかった
上記の問題を解決して失敗を避けたいのなら、入念なSAPの下調べが必要です。
SAPでどのような機能を利用できるのか、どういった点を解決できるのかを把握したうえで、導入計画を立てなければイメージ通りの効果を得にくくなります。
もしSAP導入を成功させたいなら、SAPの導入サポートをうまく活用しましょう。
後述でも紹介していますが、SAPには導入企業の事例も掲載されています。
成功事例や導入の理由、目的などを分析しつつ、導入の必要性や効果について考えてみてください。
SAP導入の流れ
初めてSAP導入を検討している人向けに、主な導入の流れをまとめました。
SAP導入の目的を明確にする
まずは「SAPでどのような課題を解決したいのか」を明確化しましょう。
現状で抱えている課題を書き出して、SAPのモジュールとの関係性をまとめていきます。
必要な機能と解決できる項目を整理していけば、自然と導入すべきSAPのモジュールを判断できます。
外部のプロに相談したり、SAPに問い合わせをしてコンサルティングしたりする方法もおすすめです。
製品やベンダーを選定する
導入したい機能や製品をまとめたら、導入をサポートしてくれるベンダーを選定しましょう。
「同じSAPを導入するのだから、どのベンダーでも同じ」だと思われがちですが、ベンダーによって次の点が異なります。
- 提供価格
- サポート範囲・品質
SAPを導入する際には、ベンダーを通じてサポートなどを受けることがほとんどです。
継続的にかかわる関係となるため、複数のベンダーに「提案依頼書」を送付し、比較検討をしながら選定することをおすすめします。
要件定義をする
自社に最適なSAPのモジュールを見つけるために重要なのが、要件定義です。
要件定義とは、必要な機能・要求をまとめる作業のことであり、要望に合うモジュールを取捨選択するために欠かせない作業です。
要件定義書を準備して、次の項目をまとめてください。
- システムの概要(目的・背景・課題・解決策)
- 業務要件
- 機能要件(必要な機能)
- 非機能要件(セキュリティ・性能・運用)
設計・開発する
SAPの設計・開発は、ベンダーを中心に進めていきます。
事前に作成した要件定義書をもとに、定義したロジックが間違っていないか確認を進めていくのが特徴です。
ベンダーと打ち合わせ・ヒアリングをし、レビューにて内容の確認が完了したら、実際にプログラム開発やカスタマイズへと進みます。
事前テストを実施する
SAPの構築が完了したら、リリース・運用する前に動作テストを実施します。
テストでは、次の項目をチェックするのが一般的です。
- バグがないか
- 設計書通りの動作をするか
- 連携機能が正しく動作するか
リリース・運用する
テストを完了したら、実際にSAPをリリースします。
またリリースした後に、不具合などが発生する場合もあるため、リリース後もベンダーに残ってもらいシステム障害が発生しないかモニタリングを続けることが重要です。
SAPの日本企業における導入事例
SAPは、日本の大手企業・中小企業でも数多く導入されています。
参考として、2社分の導入事例(目的・課題解決)をまとめました。
TOPPANの導入事例
生活産業、エレクトロニクス事業を展開しているTOPPANは、レガシーシステムから脱却を図り、アプリ開発のプロセス自動化するために「SAP Business Technology Platform」を導入しています。
SAP Business Technology Platformにてプログラミング開発のワークフロー・インターフェース画面を共有できるようになり、レガシーシステム時代のアナログな開発方法から2倍以上の生産性向上をとげました。
HITACHIの導入事例
総合電機メーカーのHITACHIは、取引先企業を含むサプライチェーンの動きを加速化し、柔軟性のある業務へ対応するべく「SAP Transportation Management」「SAP Business Network Freight Collaboration」を導入しました。
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